言語学習

A cup of coffee on handwritten Spanish notes for language learning inspiration.

AI時代にも役立つ外国語学習7選

日本国内にいる限りでは、日常会話程度の英語を話せるだけでチヤホヤされるものだが、海外を旅していると3ヵ国語、4ヵ国語、場合によっては10数ヵ国語話せる強者に出会うこともしばしばだ。AIの台頭で、様々なコンテンツを瞬時に多言語に翻訳できる時代になったとはいえ、人と人とのコミュニケーションでは、外国語で直接会話できる能力の重要性は変わらない。 自分も何ヵ国語も話せるポリグロット(多言語話者)になりたい!と思ってはみても、外国語の習得には通常数カ月どころか数年はかかるもの。5年後を見据えて今から外国語学習を始めるとすれば、どの言語を選べばいいだろう。その言語を話す人口規模や経済成長率を考慮しつつ、2025年に学ぶべき外国語を7つ厳選して紹介しよう。 1.英語 ネイティブスピーカー:約4億人 公用語として使用する国:60カ国以上 何といってもまずは英語。2023年時点で英語を母国語として話す人は約4億人、第二言語として話す人も約11億人。約60カ国以上で英語が公用語として使用されている。アジアだけでもインド、フィリピン、スリランカ、マレーシア、シンガポールなど様々だ。英語がグローバル言語である状況はしばらくは変わらないだろう。日本人にとって英語が難しいといえる理由については別の記事で書いたが、それと同時に英語の良質なコンテンツは本屋にもネットにも溢れている。日本人向けの教材がすでに十分そろっているという意味では、学びやすい言語ともいえる。まだ、英会話に自信がない人は2025年からでも、ぜひ始めてみよう。 2.スペイン語 ネイティブスピーカー:約5億人 公用語として使用する国:21の国や地域(プエルトリコを含む) スペインはもちろんのことながら、中南米諸国またアフリカの赤道ギニアでも公用語として使用されており、スペイン語を母語として話す人の数は英語以上に多い。今後、中南米諸国の出生率は徐々に低下すると予想されているものの、現状では北米・南米・欧州でのスペイン語の影響力は大きく、大きなキャリアチャンスになり得る。特殊な音が少なく、日本人にとって発音しやすい言語という点も考えると、これからトライしてみる価値はあるかもしれない。 3.中国語 ネイティブスピーカー:11億人以上 公用語として使用する国:中国、台湾、シンガポール 母語として話す人の数が世界一と言われるのが中国語。近年は高齢化と人口減少が叫ばれているものの、中国のGDPはアメリカに次ぐ世界第2位であり、今後25年間はグローバル経済に大きな影響力を持ち続けると予想されている。インドネシアやタイ、マレーシアなどアジア諸国はもちろん、世界中に広がる華僑の影響力を考えれば、中国語はかなり有益なスキルと言える。さらに漢字が読める日本人にとっては学びやすい言語だという利点もある。 4.ヒンディー語 ネイティブスピーカー:5億人以上 公用語として使用する国:インド、フィジー 現在インドは中国を抜いて人口世界一。総人口は約14億4000万人だ。インドには22の公用語があるが、その中で最も多くの人に話されるのがヒンディー語。中国語、英語に続いて世界で3番目に多く話される言語となっている。さらに中国とは異なり、インドは現在進行形で人口が増加している。インド国外でも、歴史的背景や地理的な理由でネパール、モーリシャス、フィジー、南アフリカ、イギリス、シンガポールなどに大きなヒンディー語話者のコミュニティがある。近年では中国を凌ぐ高い経済成長率を維持しており、将来を見据えてインドとビジネス関係を築いておきたいと考える人にとっては必須の言語と言えるだろう。 5.フランス語 ネイティブスピーカー:1億3000万人 公用語として使用する国:29カ国 母語としてフランス語を話す人の数はそれほど多くないが、第二外国語としてフランス語を話す人の数も含めると、その数は3億人以上。ヨーロッパやカナダ、アフリカの旧植民地諸国で広く使用されている。国際連合の公用語のひとつでもあり、国際機関での就職、またアフリカのフランス語圏への進出を目指す人にとっては必須のスキルといえる。 6.アラビア語 ネイティブスピーカー:約3億人公用語として使用する国:26カ国 日本から見ると遠く異国の地のように感じるが、アラビア語も国際連合の公用語のひとつで、世界中で約3億人がアラビア語を母語として話すという。アラビア語圏の国々は概して出生率が高く、人口も増加傾向にある。石油に依存した経済状況や政情不安ゆえに今後の経済成長は予想が難しいが、石油関連の仕事、国際機関での就職を考える人にとっては学習する価値のある言語だ。日本人でアラビア語を話す人が少ないという点でも、ビジネスキャリアの面で他と差をつけるポイントになるかもしれない。 7.ロシア語 ネイティブスピーカー:約1億5000万人 公用語として使用する国:4カ国(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス) 日本から近くて遠い国・ロシア。ロシア語を母語として話す人の数は日本人口より若干多い程度だが、旧ソビエト諸国を含め、ロシア語が通用する国の数は15ヵ国語にのぼる。第二言語としてロシア語を話す人を含めたロシア語話者は約2億8000万人と言われる。ロシアに親近感を持つ日本人はあまり多くないかもしれないが、ロシアは広大な国土と、芸術や文学など豊かな文化を持つ国だ。学んでおいて損はない言語と言えるだろう。 以上、ビジネスキャリアという観点から見た場合に、今後役立つ可能性の高い言語を7つ挙げた。今回はランクインしなかったが、ブラジルやアフリカ諸国で使用されるポルトガル語、日本から地理的にも文化的にも近い関係にある韓国語、世界第4の人口を誇るインドネシアのインドネシア語なども要チェックだ。 まとめ 本記事では話者数、経済成長率、国際的な影響力と言った観点から、今後のビジネスキャリアに役立つと思われる言語を7つ紹介した。 とはいえどの言語を選ぶかは、個人の興味や目標、将来のキャリアプランによって大きく異なるだろう。たとえ話者数がそれほど多くないマイナー言語でも、自分がその国の文化に本当に興味があるなら時間をかけて学習を続ける価値はあるはずだ。外国語学習は終わりのない旅のようなもので時間はかかるが、自分の世界を広げ、コミュニケーション力を高めるいい機会だ。この記事を参考に、2025年からでも外国語学習を始めてみよう。

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なぜ日本人は英語が苦手なのか。

日本人の英語力は116カ国中92位― 2024年に、116の国・地域で英語を母語としない約210万人を対象に行われた国際調査、EF EPI英語能力指数の結果だ。これまでも日本の英語力が先進国と呼ばれる国の中で最低レベルという話は何度も出ていたが、今回の結果は過去最低だという。先進国どころかインフラもあまり充実していない発展途上国にさえ大きく後れを取っている。 出典:英語能力指数 | EF 英語能力指数 | EF 日本 中学から高校まで、最近では小学生から英語を学ぶ人も多いにもかかわらず、なぜ日本の英語力は世界最低レベルなのか。その理由を考えてみよう。 日本人が英語を話せない理由 様々な議論があるが、よく言われるのが次の二つだ。ひとつは、英語と日本語の言語間の距離、二つ目は英語を使う機会の少なさだ。それぞれ見てみよう。  1.英語と日本語の言語間の距離 言語間距離 (Linguistic distance) という考え方がある。簡単に言えば、二つの言語の文法上の特徴や発音、また類似性を比較して、どのくらい違うのかを考えるものだ。 例えば世界には数千、数万という異なる言語があるが、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語、フランス語などは別々の言語ではあるもののロマンス諸語に属しラテン語という同じ言語を起源にもつ。英語、ドイツ語、スウェーデン語もゲンマン語派に属し、共通の言語を起源にもつとされる。さらには英語もスペイン語もロシア語もヒンディー語もインド・ヨーロッパ語族という言語学上の大きなくくりの中に区別される。要は数百年、数千年さかのぼれば皆おんなじ言語だったということだ。そうなると文法的にも類似性が高くなる。 私はイタリア語もポルトガル語も話さないが、スペイン語が分かるので、ロマンス諸語に属する他の言語もやんわり理解できてしまったりする。ブラジルの空港で空港職員を相手にポルトガル語対スペイン語でなんちゃってコミュニケーションを取ったものだ。おそらく相手は嫌がっていたと思うが。 では、英語と日本語の言語間距離はどうなのかというと、アメリカのForeign Service Instituteという機関が調査した結果がある。結果は、スペイン語やオランダ語が英語話者にとって習得が比較的容易な「カテゴリー1」に区分されているのに対し、日本語は「カテゴリー5」。つまり英語話者にとって、最も言語間距離が離れており、最も習得が難しい言語に区分されている。習得に必要な学習時間は最低88週間(2200時間)。つまりアメリカ人にとっても日本語は難しいということだ。 とはいえ、おそらくほとんどの日本人にとって、わざわざ数字やランキングまで出されなくても感覚的に納得のいく結果かと思う。「主語+動詞+目的語」という英語の文法構造も感覚的に分かりずらいし、「R」と「L」の発音や、「th」、「v」など日本語にはない発音が多すぎる。しかも英語は書いたとおりに発音しない単語が多く、各単語の発音を一つ一つ覚えなければならない。やはり、英語は日本人にとっても「難しい」言語なのだろう。   2.英語を使う機会が少ない 日本人が英語を話さない理由の一つとして、もうひとつよく言われるのが、アウトプットの機会の少なさだ。出入国在留管理庁のウェブサイトによると日本に住む在留外国人数は約359万人。日本の総人口の約3%が外国人というところか。その半分くらいは中国、韓国、ベトナムで占めているが、フィリピンやアメリカなど英語を話す国からもそれなりの数の人が来ている。 実はこれは個人的な感覚と少しずれていて、2022年に日本に一時帰国した際、(東京だが)地元にも外国人が増えたなあと思ったものだ。中国人や韓国人だけでなく、白人にもアフリカ人にもよくすれ違う。もしかしたら地域差があるのかもしれないが、探せば割とどこにも英語話者はいるし、アウトプットの機会はありそうに思える。 ただ、一億を超える日本人口の中では、英語が話せなくても友達作りに困ることはないし、日本語でニュースもドラマを見れる。おいしい食事も食べれて、仕事も見つかる。そうなると英語を話す必要に迫られる場面はほとんどなさそうだ。 日本人の性格と言語学習の関係 日本人が英語を苦手とする理由としてよく言われる理由をふたつ挙げたが、それだけでは説明できない面もある。例えば、日本語と英語の言語間距離を考えたが、同じく言語的には距離があるはずの中国、韓国、モンゴル、ベトナムの英語力スコアは日本より上だ。平均知能指数が世界一の日本が、なぜか英語力ではアジア諸国の中で最下位レベルになるのか。 個人的に思うのが日本人の性格的特徴だ。一般的に、日本人は「和」を重んじ礼儀正しいが、慎重で集団行動を好み、リスクを取れないと言われる。 じつは性格と言語習得の相関性を考えた研究は数多くある。よく言われるのは、外向的な人ほど言語習得が早いというものだが、実際にはそんなに単純なものではないようで、外向的な人は口頭でのコミュニケーションでは高い能力を発揮しても、筆記テストでの正確性では内向的な人の方が成績が良いという研究結果もある。またリスクテイカー(リスクを取る人)と外国語習得能力にも相関性があるとする研究があり、リスクを取れる人の方が、コミュニケーション能力において他者を上回ることが多いようだ。 ひとつ確かなのは、ネイティブが相手の英語力を評価する一番の尺度は、コミュニケーション能力と英語の発音の明瞭さであり、筆記試験ではない。特にAIが発達した現代では、複雑な英語の論評をどれだけはやく読めるかというのは、英語力を測る重要な要素ではなくなっている。 残念ながら日本の英語学習は文法や読解、試験対策に偏りがちで、コミュニケーション能力をあまり重視していない。私自身も含め、日本人のコミュニケーション能力は褒められたものではないと思う。外国人を前に、限られた語彙でも堂々と会話を試みたり、自信をもって相手と交渉することができる人が少ない。意味不明な苦笑いを浮かべていたり、自信のなさからか挙動不審になったりと、見ていて痛々しくなる。そんな日本人を見るたびに、自分を鏡写しで見ているようで嫌な気持ちになったものだ。 これにはある程度科学的な裏付けがあるようだ。不安を感じやすい遺伝子(セントロニントランスポーター遺伝子SS型)というものがあり、この遺伝子を持つ人は心配性になりやすいという。現に日本人の約65%はこの遺伝子を所有しており、これが日本人の性格的特徴にある程度影響している可能性もある。周りと同調して、決められた線路の上を歩くことを好み、個人の意見を主張できず、リスクを伴う大胆な行動がとれない。 なにも日本人を貶めるつもりでこんなことを書いているわけではないが、人生の駒を進める上で自分の弱点を知るのは大切なことだ。自分の性格的な傾向がネックになっているとわかれば、相応の対策も取れるというわけだ。 まとめ 言語を学ぶということは、文化や価値観を広げるということだ。外国語学習を通じて、新たな世界に触れ、小さな冒険を始めることができる。しかし、日本語と英語の言語間距離に加え、日本人の性格的特徴も外国語習得に影響を及ぼしている可能性がある。コミュニケーション能力や外向性など、自分の弱点を理解し、克服するための戦略を立てれば、言語学習の成果を大きく向上させることができるかもしれない。

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