「郷に入っては郷に従え」とはいうものの、何年経っても理解できないことはある。海外生活で直面する文化の違いの話だ。海外生活が20年を超え、カルチャーショックを受けることはまずなくなったものの、未だに理解しがたい、賛同できないことはあるものだ。
先日、ライター登録している「たびこふれ」に長期滞在・海外移住してよかったこと・大変だったことをまとめて投稿させていただいた。
長期滞在・海外移住のリアル|現地で感じたメリット・デメリットとは? | たびこふれ
最近、大学卒業後に就職したものの、さまざまな理由で「会社を辞めて海外に出たい」「長期で海外生活をしてみたい」という人の声をよく聞く。それで今回、そんな方に向けて、著者が考える海外移住・長期滞在をしてよかったこと、正直大変だったことをまとめてみようと思う。
それで今回、本記事ではパラグアイ生活の良いところ、大変だったことを、二回の分けてまとめてみようと思う。まず本記事で取り上げたいのが、パラグアイ生活で「大変だったこと」だ。パラグアイのみならず、南米に長期滞在してみたいと思う人は、是非参照されたい。
殺人的な暑さとカビ

“空気は湿気に満ちすぎていて、涙が汗と見分けがつかなくなった。”
『百年の孤独』より ガブリエル・ガルシア=マルケス
亜熱帯に属するパラグアイ、特に首都のアスンシオンはとにかく暑い。日本の夏も暑いが、日本の真夏の暑さが年中続くような感覚で、12ヵ月間ほとんど休みなく暑くなる。日本より赤道に近く日が高く昇るせいか、肌を刺すような日光が赤い大地に降り注ぎ、噴き出した汗がとまらない。
それだけではない。耐え難いのは「暑さ」そのものより「湿度とカビ」だ。湿度が80%を超える不快な湿気が肌にまとわりつき、モップで拭いた床がいつまでたっても乾かない。
さらに高湿度の日が続くと、カビが壁を覆うようにして広がっていき、1日2日で壁の色が薄黒く変色していく。革製品も同じで、1週間か2週間使わなかった革のベルトやカバンがとたんに緑色のカビで覆われてしまい、使い物にならなくなる。これは我慢でどうにかなる問題ではない。
騒音
パラグアイ人は一般的に温厚で親切だが、パーティの時はラテン系のステレオタイプにしっかり倣い、爆音を町中に響かせて夜な夜な踊り狂う。家族の絆を大切にする国民性もあってか、誕生日や結婚記念日、卒業祝いなど、親族を集めてパーティを開く理由には事欠かない。一応、夜の10時から朝の6時までは騒音は控えましょう、という条例はあるようなのだが、警察を呼んだところで注意して終わるだけで、何が変わるわけでもない。
さらに理解に苦しむのが、後部トランクにスピーカーを積み込み、右翼の街宣車さながら大音量で音楽を響かせながら走る車だ。私は密かに「巻き込み型騒音車」と名付けているが、なぜ自分だけで楽しむのではなく、わざわざ周囲全員をパーティに引きずり込もうとするのか、不思議でならない。
モラルの退廃と享楽的雰囲気

非婚出産率70%超-。パラグアイで両親が結婚していない状態で生まれる赤ん坊の割合だ。
日本の非婚出産率が2.3% (2022年)と比較して、格段にその数が高い。これを「結婚という形式にとらわれない新しい社会構造を反映した数字」などと呼ぶのは愚の骨頂であり、単に道徳を無視した無責任な親が多いというだけのことだ。
この数字は、私が8年間の生活で耳にしてきた実情とも一致する。10代での妊娠や出産、結婚前からの同居、さらには複数の相手との間に子どもを持つといった話は、決して珍しくない。
裏付けがあるわけではないが、19世紀末に起きた三国同盟戦争で成人男性の9割近くが死亡し、男女比がいびつになったことも、パラグアイでの結婚観や道徳観に影響を与えていると言われる。
家族の絆
家族の絆が強いというのは悪いことではない。貧困が大きな問題で、しかも政府からの援助があてにならない状況では、家族の絆が問題を乗り越える助けにもなるのだろう。
ただ、とっくに成人した大人が親の庇護を当然のように受け続けることや、結婚をしてもなお親の家に吸い寄せられるように暮らし始める姿には、どこか不思議な感覚を覚える。
家族のきずなは大きな問題が生じた時のセーフティネットではあるが、「家族の鎖」となって、個人の行動や自立を制限するものであるべきではないと思う。
バイバイ (vaivai ) な文化

パラグアイの公用語のひとつグアラニー語に vaivai という言葉がある。直訳すると「いい加減な」「頼りない」という意味になるが、実際には、国民性を皮肉る表現として使われることが多い。
何をしても「まぁ、だいたいそんな感じで」というはっきりしない曖昧な、いい加減な態度を示すことがあり、それが公共サービスの質にも影響を及ぼしているように思う。インターネットやその他のサービスを予約しても時間通りに人が動かない、細部まで注意を払わずいい加減に仕事を終わらせる、とそういうことだ。
長年住んでいると慣れてくるし、何事も緩い人間関係が心地よくなってきたりもするが、必ずしも良いことではない。特に、この vaivai 気質がパラグアイの衛生面にまで及ぶとすれば、もはや慣れの問題ではなくなる。
以上、パラグアイに8年住んで、「大変だったこと」を5つまとめてみた。パラグアイの悪口のようになってしまったが、それぞれの国に良いところと悪いところがあるものなので、自分が個人的に賛同できないところがあるとしても、それ自体は悪いことではないだろう。
もちろん、パラグアイ生活には楽しいこともたくさんある。次の記事ではそのことを紹介したい。